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「日本人が初めて第九を聴いた街」久留米 演奏100周年記念し市民合唱団発足

 100年前に日本で初めて一般の人がベートーベンの交響曲第9番(第九)を聴いた福岡県久留米市で、市民による「久留米第九を歌う会合唱団」が発足した。「久留米を第九の街に育てたい」と意気込む団員らは100周年となる12月、市内のホールで九州交響楽団と共演し、第4楽章の「歓喜の歌」を高らかに歌う。

 100年前の1919年に同市で第九を演奏したのはドイツ兵の捕虜だった。日本は14年の第一次世界大戦で、ドイツが拠点にしていた中国・青島(チンタオ)を陥落させ、捕虜4679人を国内の各地に移送。このうち、久留米の収容所には最多の1319人が収容されていた。

 市によると、ドイツ兵は一定程度人道的な扱いを受け、収容所の所長は音楽活動についても「ドイツ人にとっての音楽は日本人にとっての漬物のようなものだ」と理解を示して楽団の結成を許可した。

 ドイツ兵は19年12月3日、久留米高等女学校(現明善高校)で女学生のなぎなた術を見学した返礼として、第九を女学生の前で演奏した。前年の6月には徳島県鳴門市のドイツ兵捕虜収容所で第九演奏があり、同市は日本初の第九演奏の地といわれる。ただこの時は、捕虜の楽団が同じドイツ人捕虜を相手に演奏しており、久留米市は収容所外で一般の日本人が初めて第九を聴いた地とされる。

 合唱団が発足するきっかけとなったのは、同市六ツ門町の大型公共施設「久留米シティプラザ」の2016年の開館公演で、市民オーケストラと、公募した合唱団が「歓喜の歌」を奏でたことだった。公演は盛り上がり、音楽指導担当だった元高校音楽教諭で久留米連合文化会会長、木村清吾さん(80)が「100周年を迎える19年に『第九の街・久留米』をアピールするイベントをしよう」と提案。指揮者を務めた現田茂夫さん(60)も賛同し、再びタクトを振ることになった。

 合唱団には当時のメンバーを中心に、福岡市や佐賀県鳥栖市など久留米市民以外も含め、18歳から90歳の約200人が集まった。8月20日の発足式後にあった初練習では発音を確認し、ピアノ伴奏で合唱。久留米市の福間雅子さん(71)は夫利英さん(77)と参加し「久々の合唱で不安だったが、声を出すと心が湧き躍った」と充実した様子だった。練習で指揮した木村さんは「情熱的で迫力ある合唱にしたい」と意気込む。

 合唱団は不足しているソプラノを現在も募集している。演奏会は久留米シティプラザで12月28日に開催。今月10日からチケットの販売が始まる。合唱団事務局090・5385・3356。【安部志帆子】